12才未満へのゾフルーザの投与は慎重に!慎重にって何?
こないだに引き続きインフルエンザの薬の話となります。
先日2018年3月から販売されている、インフルエンザの新規治療薬「ゾフルーザ」について、12才未満への投与は慎重に行う様にと日本感染症学会が提言を発表しました!
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/191024_teigen.pdf
今回の記事ではこの「ゾフルーザ」についての話となります。
簡単に「ゾフルーザ」についてのまとめと、なぜ慎重に投与すべきなのか、慎重に投与と提言されると何が変わるのかなどについてまとめたいと思います。
「ゾフルーザ」ってそもそもどんな薬?
どうやって効くの?
インフルエンザウイルスは体内に侵入した後、細胞内で分裂、細胞外へ飛び出して次の細胞でまた増殖するという増えかたをしていきます。
「ゾフルーザ」はインフルエンザウイルスが体内に入ってきた後にウイルスが分裂(増殖)するのを防ぐ薬となります。
「タミフル」や「リレンザ」、「イナビル」などの既存のインフルエンザ治療薬は細胞外へ飛び出していく段階を防ぐ薬です。
塩野義製薬提供
このCapエンドヌクレアーぜ阻害薬というのが「ゾフルーザ」となります。
飲み方は?
という事で下にインフルエンザ治療薬の使い方などを全てまとめてみました。
価格に関しては薬の値段だけで、2018年度の薬価で1回の治療あたりの値段となります。
製品名 (一般名) |
投与経路 | 剤形 | 用法 | 価格 (成人投与) |
予防投与 | 小児 | 新生児 |
タミフル® (オセルタミビル) |
経口 | 錠剤 ドライシロップ |
1日2回 5日間 |
\2,720.0 (¥1,360.0) |
可 | 可 | 可 |
リレンザ® (ザナミビル) |
吸入 | ドライパウダー | 1日2回 5日間 |
¥1,471.0 | 可 | 可 | 不可 |
イナビル® (ラニナミビル) |
吸入 | 吸入粉末 | 単回 | ¥4,279.8 | 可 | 可 | 不可 |
ラピアクタ® (ペラミビル) |
点滴 | 点滴液 | 単回 | ¥6,216.0 | 不可 | 可 | 不可 |
ゾフルーザ® (パロキサビル) |
経口 | 錠剤 顆粒 |
単回 | ¥4,789.0 | 不可 | 可 | 不可 |
ゾフルーザの良い点は1回飲み薬を飲んでしまえば終了という点です!
その場で飲んで終了、後は解熱剤とかは出すから安静にしておいてね と
まぁ楽ですよね!
親としても子供が薬嫌いだったりすると「タミフル」だと合計10回も飲ませなきゃいけないのでそれだけで気苦労ですが、「ゾフルーザ」だと1回頑張ればいいだけですので楽ですよね。
実際の効果は?
「ゾフルーザ」は何も飲まなかった時と比較して病気の期間を短くすると言われており、「タミフル」と比較したデータでも、病気である期間について効果に差はなかったと、しっかりと効果があるといったことがわかります。
そして実は、「ゾフルーザ 」はその効果の面からもしかしたら他人にうつりにくくなるのではないかと言われています。
「ゾフルーザ」が薬として使用できるか試験を行った際に「タミフル」と比較したデータがあるのですが、「ゾフルーザ」では「タミフル」よりも、体内からインフルエンザウイルスが検出されなくなるまでの時間が2日ほど短かったという結果が出ています。
インフルエンザにかかっている人からウイルスが検出されるのが短くなるのならば、他人にうつす期間も短くなるのでは? という考え方ですね!
実際にこれだけ数が減ったというデータはなく、あくまでも効果、検出時間の面から考えるとという程度の話ではありますが…
実際に昨シーズン使われ始め、市場シェアの4割が「ゾフルーザ」だったと言われておりますが、インフルエンザの流行はありましたし、なんとも言えませんね。
なんで慎重に投与するの?
さて、ここまで「ゾフルーザ」を中心として、インフルエンザの治療薬についてまとめてきましたが、これからは「ゾフルーザ」が今おかれている状況についてです。
実は、この「ゾフルーザ」ですが、すでに耐性化したインフルエンザウイルスが出てきています!
耐性化というのは、薬そのものが効きづらくなるもので、今回は「ゾフルーザ」が効きづらいということです!
「タミフル」耐性のインフルエンザウイルスも出てきておりますが、「タミフル」が18年程使用されて1%程度なのに対して、「ゾフルーザ」は販売前から10%程度と言われております。
おそらくこの10%程度は自然耐性だと思われますが、使い始めてからも少しずつ増えており、12歳以上よりも12歳未満の子供の方が耐性ウイルスが多く検出されており、1/4程度が耐性とまで言われております。
耐性化するとウイルス検出期間がむしろ延長し、症状も長引くという風に言われております。
そのため、今回日本感染症学会から12歳未満への投与は慎重にという提言が出されたわけですね!
「慎重に投与」提言されるとどうなるの?
実は何も変わりません!
え(@_@;)!? って思われた方もいるかもしれませんが、医師が処方する際に何かしなければいけないことが増えるわけでもなし、薬剤師の説明するべきことが増えるわけでもないので…。
「使用すれば使用するほど耐性化ウイルスが出てくる可能性が上がりますので、出さないためにも使用を控えてね。今後の、タミフル耐性ウイルスの治療だったり、新型インフルエンザに備えて使用を控えて耐性化を遅らせようね」といった期待が込められていると思いますが、禁止にしないあたりに製薬企業側への忖度があるようにも思えてしまいます。
まとめ
簡単に「ゾフルーザ」と今回の提言についてまとめてみました。
実際、使い勝手としては良い薬だと思いますが、私個人としては、「タミフル」の耐性ウイルスが主流になって「タミフル」が使い物にならなくなった時だったり、新型インフルエンザが猛威を振るっている時などに残しておくべき薬なんじゃないかと思っております。
まぁ企業側としても開発費用などがかかっているので、売らなければならないというのはわかるのですが…
ちなみに、インフルエンザは基本薬を使用せずとも治るような病気です。
薬を使用して1~2日早く治すといった程度ですね。
日本では保険診療で安くすむためインフルエンザの診断を受けると全員薬が出されますが、海外だと1~2日早く治すためだけに金は出さないという人もいるくらいです。
「ゾフルーザ」には1回だけで良いというメリットはありますが、費用対効果や将来的な事から、現時点ではまだ「タミフル」の方が良い薬なのではないかなぁというのが私なりの見解です。