病院薬剤師さささっぽのブログ

3年目の病院薬剤師! 薬剤師として未熟者です。わかりやすくをモットーに薬や医療の話をする他、風景、夜景、星空など写真を撮ったものの紹介、雑談もします。

薬の誤投与で患者死亡!?

京大病院で薬の誤投与に関連して患者が亡くなるということがありました。

 

medical.jiji.com

 

どういうことだったのか簡単にまとめていきたいと思います。

 

 

 

医療事故の詳細

患者は腎臓の機能が弱くなっている心不全の患者。

心臓が弱っているということもあり、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方だったみたいです。

おそらく心臓の検査をするためでしょうか、”造影剤を用いたCT検査”を行いました。

その時に造影剤による腎臓への負担を下げる薬が投与されました。

その薬が成分は同じなのですが、濃度が本来投与されるべき薬よりも濃いものが使われており心停止してしまいます。

その後、蘇生処置が行われ心拍は再開したのですが、心臓マッサージの際の胸骨圧迫が原因と思われる肺からの出血で数日後亡くなってしまうという医療事故でした。

 

 

わかる範囲での解説

順を追って説明していきます。

 

腎臓の機能とは?

腎臓は身体の中で体内に必要な物質といらない物質とをわけ、血液中のいらない物質をおしっことして出すという機能を行なっております。

血液の濾し器の役割を行なっているといえばなんとなくイメージはわくでしょうか。

薬の成分も多くは腎臓から体外へ出されています。

この腎臓の機能が下がってしまうと体内に薬が残りやすくなってしまうため、通常大丈夫な量でも効果が長く出てしまったり副作用が出やすくなってしまうことがあります。

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造影剤とは?

造影剤は画像診断検査を行う際に、より検査結果をわかりやすくするために用いられる薬となります。

ですが、身体に合わない人も多くアレルギー反応を起こしてしまったり、ほとんどの人で身体が火照ることがあります

また、使い方を間違えてしまうと最悪の場合死に至ることもある薬で、注意が必要なものとなります。

そして、腎臓から体外へ出される薬となります。

 

腎臓が悪い人への造影剤

ということで、腎臓の機能によって造影剤が使えるかどうかを判断する必要があります。

腎臓の機能がかなり悪い人には造影剤は使えませんし、悪い人に対しては水分の点滴を入れてから使うことが推奨されております。

水分の点滴を体内に入れると身体の中で過剰になった分の水分がおしっことして体外に出されます。

造影剤の検査では、造影剤が体内に長く止まっている必要はないので、おしっこを出しやすくする状態を身体の中で作っておいて造影剤を体外に出すことを促します。

簡単に言ってしまうと、腎臓の機能が悪くてうまくおしっこの中に出せないけど、おしっこの出す量を増やしたら出て行くよねといった感じになります。

今回はこのおしっこを出しやすくする段階で使う薬が濃度が本来使うべきものよりも高いもので出されたために、体内に薬の成分が過剰に残ってしまったため、心肺停止に至ったと考えられます。

濃度が高いものを細い血管から入れると血管に痛みが生じる事があり今回も患者の訴えはあったみたいですが、血管が太いところに点滴を変えたり、過量投与が原因と思われる火照りもあったとのことですが造影剤による原因だろうと判断され大きな問題として扱われなかったみたいです。

 

心臓マッサージ

心臓マッサージは心臓が動いていない人に対して行われます。

心臓に刺激を与えるとなると、胸をだいぶ強く押さなければなりません。

この時、肋骨が折れてしまう事もあります。

今回の患者さんでは特にここら辺の記載はなかったので、どのような事が起こったかわかりませんが、胸を押している間に肺へ負担がかかってしまい、肺から出血があったとのことでした。

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”抗凝固薬”血液をサラサラにする薬

今回患者さんは血液をサラサラにする抗凝固薬といわれる分類の薬を服用していました。

心臓の機能が弱くなってしまうと、血液がうまく体内で流れる事ができなくなります。

血液の流れが悪くなってしまうと身体の中で血液が固まってしまう事があります

所謂エコノミークラス症候群と同じ状況です。

今回の患者さんでは心不全で心臓が弱っていたという事もあり、血液をサラサラにする薬を飲んでいたという事でしょう。

その為、肺から出血があった際に全然止まらなかったという事があります。

また、今回の血液サラサラにする薬では、作用を弱める薬もあった為、最終的その薬が使われているのですが、飲んでいたことに気づくのが遅れて、投与を遅れてしまったとのことでした...

心不全で入院していたという事ですので、気づける段階であったのではないかと考えますが、現場としてはそれどころではない状況だったのかなとも思います(>_<)

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では何が出来るだろうか

今回の事例で薬剤師として何が出来るだろうか

近場に薬剤師がいたかはわかりませんが、いたとしたらその患者がなんの薬使っていたかの把握はするべきだったでしょう。

それだけで、血液サラサラの薬の効果を弱める薬を早く投与出来ます。

次に、薬の払い出しの際の確認ですね。

薬品名は今回飛ばして記載しておりますが、過量投与に至った薬の払い出しは流石に多くて疑問を持つべきところなのじゃないかなと感じました。

私が所属している病院では救命救急科がないので、そのために疑問を持っただけなのかわかりませんが…

うちでは処方されないような量だったので…

 

 

 

という事で、薬剤師の視点から今回の医療事故についてまとめてみました。

医療事故というのは改めて振り返ったりまとめたりすると、基本的なことを行うこと、確認することをしっかりとしていれば防げることが多かったりします。

人間は完璧でない以上誰でもミスをしてしまう生き物です。

しかし、医療現場では1つのミスが患者さんの生死に関わってくる事があるので、1つでもミスを減らす事、自分や他の人がミスをしているかもしれないと思いながら働く事が重要となってくると私は思います。

そう思って普段の仕事を取り組んではいますが、私も人間である以上ミスはします。

今回の医療事故も「明日は我が身」かもしれません。

ここでまとめる事で、このような医療事故を自分の周りで防いでいきたいと思います。