病院薬剤師さささっぽのブログ

3年目の病院薬剤師! 薬剤師として未熟者です。わかりやすくをモットーに薬や医療の話をする他、風景、夜景、星空など写真を撮ったものの紹介、雑談もします。

迫る”世界エイズデー”に向けたHIV記事第2弾! 生まれてくる子供を守るために!

前回に引き続きHIVの話になります。

12月1日、来たる世界エイズデーに向けたHIV記事2本目です!

 

1本目はこちら↓↓

www.sasasappoblog.com

 

今回は、HIV陽性女性が子供を産む時の問題点と対応方法についてまとめます。

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HIV感染妊娠の現状

1980年代、HIV母子感染は約30〜40%で起こると言われておりました。
現在でも、2016年の段階で約16万人の15歳未満の子供が新たにHIVに感染したとされており、そのほとんどが発展途上国で母子感染した子供たちと言われております。
HIV垂直感染の予防対策が行われていない場合の感染率はだいたい15〜30%と言われております。
日本ではしっかりと対策が行われている為、現在ほとんど発生しておらず、母子感染率は0.6%と言われております。

 

 

HIV母子感染経路

垂直感染経路も様々あります。

  1. 経胎盤感染 
  2. 経産道感染
  3. 経母乳感染

といった経路があり、全ての感染経路に対して対応を行う事によって、垂直感染の可能性を極力減らしていきます

 

経胎盤感染

母親の血液内のHIVウイルスが胎盤内に入り、臍帯をへて胎児に感染します。

 

経産道感染

分娩の際、子供が山道を通過する際に、血液や体液に暴露することで感染します。

 

経母乳感染

母乳の摂取によって子供に感染します。 

 

 

HIV妊婦の問題点

HIV陽性女性が妊娠する際には多数の問題が生じます。

  1. 妊娠中、子供への薬の影響
  2. 分娩方法
  3. 子供が生まれてからの対応
  4. 授乳時の問題

などの問題が生じてきます。

それぞれ時系列に沿って説明していきます(^^)

 

 

妊娠する際はどうするの?

いきなり垂直感染から脱線しますが、こちらも重要な話となるので!

妊娠する場合には、男性女性どちらが陽性なのかによって対応が変わってきます。

女性:HIV陽性 男性:HIV陰性の場合

男性から採取した精子をそのまま注射器に入れて女性の膣内に注入する方法が主に取られます。

もしくは、女性のHIVウイルスのRNA量が低い場合には、男性抗HIV薬を行為前に服用した上で通常通り行う方法も考えられます。

この時、男性が抗HIV薬を飲む理由は、HIVウイルス感染の予防目的となります。

 

女性:HIV陰性 男性:HIV陽性の場合

こちらの場合は少し大変で、1つは上記と同じで男性のHIVウイルスのRNA量が低い場合に、女性が抗HIV薬を行為前に服用し通常通り行う方法。

もしくは、男性が治療・女性が予防の内服を行なった上で、男性から精液を採取、精液を洗浄した上でHIV検査をし、人工授精or体外受精を行う方法。

 

頭がすでにパンクしそうですね。

まぁ妊娠を成立させた上で感染のリスクを最小限にする方法をとっていると理解していただければ。

 

 

 

 

ここからは、全て女性がHIV陽性の話となります。↓↓

妊娠中の抗HIV薬

妊娠期間中は、抗HIV薬が胎児に与える悪影響に関しては明らかになっていませんが、抗HIV薬を服用しないことによる悪影響は明らかになっております。

薬を使用しない問題点としては、

  1. 母体のHIVウイルス量が増え、母体の状態が悪くなる
  2. HIVウイルス量が増えることで、子供への母子感染リスクが大幅に上がる

といったことがあげられます。

未知の危険の回避よりも、確実にわかっている危険を回避する為に、抗HIV薬はしっかりと飲んだ方が良いという事になります。

 

薬の種類としては、事前にHIV感染がわかっていて薬をすでに飲んでいる場合はそのまま継続して飲み妊娠時の検査でHIVが判明した場合には胎児への影響が少ないとされている薬で母体のHIV治療を行なっていきます

 

 

分娩時の対応 

分娩の方法については、現在は陣痛発来前の帝王切開が勧められております。

ただし、HIVウイルス量が十分に抑えられていたり、強い希望などがある場合に経膣分娩を行える病院も一部あるそうです。

昔は分娩時の子供の血液曝露によってHIVがうつると言われておりました。

ですが、最近の研究でHIVウイルス量が抑えられている人の帝王切開と経膣分娩とで、感染率の有意な差はなかったと結論づけられました。

 

うまくHIVウイルス量がコントロールできていない妊婦では点滴の抗HIV薬を使うことがあります。

選べるような世の中になってきているわけですね(^^)

 

 

子供への対応

子供へは感染リスクに応じて4〜6週間の抗HIV薬服用が勧められております。

この時の薬はシロップとなりますので、比較的飲ませやすい薬にはなりますが、6週間飲ませなくてはならないので、大変です(>_<)

 

また、悲しい事に現在は抗HIV薬を飲んでるか飲んでいないか、HIVウイルス量に関係なく、母乳育児ではなく人工乳育児となります。

というのも、HIVは母乳を介して子供に感染する可能性がある為、人工乳が勧められております。

まだ、議論されている段階ですが、2017年に英国で「HIVウイルス量が十分に抑えられていて、乳房・乳首に傷がなければ授乳は可能である」ということも言われ始めているようです。

今後、条件付きで母乳育児が許可される時代もくるかもしれません(´▽`)

 

 

 

ということで、HIV母子感染についてまとめてきました。

現状としては、まだ通常分娩や母乳育児については確定的な情報ではないので、感染リスクを最小限にするべく、

  1. 母親の治療はしっかりと行う
  2. 帝王切開
  3. 人工乳

が勧められております。

 

議論している段階も事も多いですが、今後HIV陰性の人と同じように育児を行えるようになる日も来るかもしれません。

HIV治療と同時に、医療の進歩やデータの収集が待たれるところですね(^^)

 

という事で、前回に引き続きHIVについてまとめてきました。

危なさについてもわかっていただいた上で、普通の人とあまり変わらないんだなって事を理解していただけてたら幸いです。

偏見が少しでもなくなることを願いつつ!